今日一緒に遊んだ女の子とはまだエッチしてないとか、落ち込んでて可哀想だったからとか、そもそもアキくんよりずっと古い付き合いの子だし、とか、私にも色々言いたいことはある。ある、が、そんなことをここでつらつらと語っても仕方が無いので略す。
なんにしたって現状問題なのは、私が今日一日ずっとアキくんの連絡を無視していたことと、その間違う女の子とイチャイチャしながらデートしていたことと、そしてその現場を、ブチギレているアキくんに取り押さえられてしまった、というだけだった。
強制連行された車の中は、暖房が効いていなくて寒い。こんな形でデートを終わらせてしまって、あの子には申し訳ないことをした。あとでなんて言い訳のメールを送ろう。……なんてことを頭の中で考えているこの思考回路こそが、私がどうしようもない浮気者である所以なのだろう。
アキくんの車が静かに発進した。行先は分からない。
「いい加減にしてくれ」
「ごめん」
「分かってて謝ってるのか」
「分かってて、って」
「自分がなんで責められてるのか」
「そりゃ浮気したから……」
アキくんはハンドルを握ったまま、前だけを見ていた。街灯の光が彼の横顔を一定のリズムで照らしては、また闇に沈める。その明滅だけが、車内で動いている唯一のもの。
「お前はそもそも、俺と付き合ってるとすら思ってないだろ」
図星を突かれた、わけではない。私はいつだってアキくんのことが好きだし、彼のものであるという自覚はある。ただ、それとこれとは別腹というか、魅力的なあの子を放っておけなかっただけで。
「そんなこと……」
「あるだろ」
私が否定しようとした言葉を鋭い視線が遮った。信号待ちで停止した車内、こちらに向けられたその瞳には、今まで見たことがないほど鋭い光が籠っているから。
「……無いと言え。あってこんなに尻軽なら、俺はいよいよお前のことを許せなくなる」
「あ……ごめん、なさい」
それ以外の言葉が出てこない。アキくんはふう、と短く息を吐き、また前を向いた。
「一回目の時は、寂しくさせた俺の責任だと思って許した。二回目の時は、ここで本気で叱ったら治ると思ったから、怒って、でも結局許した。三回目の時は状況が状況だったから、お前のことを責められなかった」
彼は淡々と事務報告のように過去の私の罪を並べ立てる。その一つ一つに心当たりがありすぎて、私はシートに沈み込むように身を小さくした。
「……それが積もり積もって、これで何回目だ、なあ」
問いかけに、答えられなかった。数えていないわけではない、けれど。だって私は多情なだけで、軽薄ではない、から。重苦しい沈黙が車内を支配する。タイヤがアスファルトを噛む音だけが、耳障りなほど大きく響いていた。
「じゃあ、私たち、別れる?」
急ブレーキの衝撃。助手席のシートベルトが胸に食い込む。何が起きたのか理解するよりも早く、凄まじい殺気が肌を刺した。アキくんが、今まで見たことの無い顔で私を振り返っている。恐ろしい目つきで。そこにいつもの冷静な彼はどこにもいない。
「は」
乾いた音が、彼の口から漏れる。
「簡単にその言葉が出てくるってことは、それが本心なんだな」
「っ、そういうわけじゃない、けど……あの……」
「いい。いいんだ」
私の弁解を遮るように、彼は掌を突き出した。その表情から、急激に怒りの色が引いていく。いや、違う。怒りが消えたのではない。別の何かに変質したのだ。もっと冷たくて、もっと重い何かに。
「考え方を変える。お前が悪いんじゃなくて、俺が悪い」
車が再び動き出す。先ほどまでの乱暴な運転とは打って変わって、滑るような静かな走行だった。
「こうなるってわかってて自由を与えた、俺の責任だ」
「え、あ」
その言葉の意味を考える余裕はなかった。流れる景色が見慣れないネオン街へと変わり、やがて車は、けばけばしい照明に彩られた建物の敷地内へと滑り込んでいく。
派手な看板。遮蔽された入り口。
いつの間にか、ラブホテルに到着していた。動悸がして、冷や汗がぶわ、と背中に滲み出した。ただのデートなら、こんな場所に来ても平気だったはずだ。けれど今の状況は、どう考えても甘い雰囲気とは程遠い。エンジンが切られる。静寂が戻った車内で、私は恐る恐るアキくんの顔を覗き込んだ。
「……怒って、る、よね」
「どう思う?」
アキくんはシートベルトを外しながら抑揚のない声で聞き返してくる。その目は、私を映していながら、私を見ていないような。
「おこってる、と、おもう」
「はは」
アキくんが笑った。そうして車を降りて助手席側に回り込んだ彼の手が、私の二の腕をがっちりと掴んだ。手加減もなしに、本気で。抵抗する間もなく助手席から引きずり出される。痛いと言葉にする暇さえ与えられず、私はそのままエントランスへと連行された。
無機質なタッチパネルの前で、アキくんは躊躇いもなく一番上の部屋のボタンを押す。逃がさない。その無言の圧力が、私の思考を白く染め上げていく。
部屋に入った瞬間、身体が宙に浮いた。
背中からベッドに叩きつけられる。弾力のあるマットに沈み込み、衝撃に咳き込んだときには、もう視界はアキくんの影に覆われていた。
「ごめっ、ごめん、ちがっ、アキくん落ち着いて、ごめんなさい、ごめんなさいっ、謝るから」
半狂乱になって繰り返す私の言葉を、冷え切った瞳が見下ろしている。
「言葉だけの謝罪は聞き飽きた。もういい」
「だからってこんなの、話し合いでどうにかしようよ、あきく……あっ」
伸ばしかけた手が払いのけられる。
「その段階はとっくに通り過ぎたんだよ」
吐き捨てるような言葉と共に視界が反転した。首筋に、鋭い痛みが走る。キスなんて生易しいものじゃない。肉を食いちぎらんばかりの勢いで、アキくんが私の喉元に牙を突き立てていた。所有印を刻み込むような、乱暴で容赦のない痛み。
「あ、ぐ……っ!?」
悲鳴を上げようとした口元が、恐怖で引きつる。痛みから逃れようと身をよじった瞬間、胸元で硬い音が弾けた。
ブチブチブチッ、と布が悲鳴を上げ、ボタンが床に散らばる音が響く。シャツの前を無理やりこじ開けられ、私は剥き出しの肌を冷たい空気に晒されたのだ。
そうして、あっという間に身ぐるみを剥がされた。
下着一枚すら残されない完全な全裸。抵抗する気力も削がれ、ベッドの上で足を開かされる。何をされるのか分からない恐怖と、肌を刺す寒さで、身体がカタカタと無様に震えてしまう。
「ぁ、っ……!?」
予兆はなかった。
乾いた場所に、いきなり指が二本、乱暴にこじ入れられる。準備も潤みもない粘膜が悲鳴を上げ、鋭い痛みが腰を貫いた。
「やめて、やめてっ、いたい、痛いっ!」
あまりの痛みに涙目でシーツを掻きむしり、逃げようと腰をよじる。けれど、私の太ももはアキくんの膝によってガッチリと抑え込まれていて、一ミリも前へ進めない。
逃げ場のないまま、身体の奥を蹂躙される。
「ひっ、あ、ううっ!」
首筋に、執拗に唇が押し付けられた。
何度も、何度も。噛みつくようなキスと、肉を食む痛みが降ってくる。上からは痛みと熱、下からは冷酷な指の動き。
滅茶苦茶にかき回されているうちに、悲しいほど正直な身体が、ぐずぐずと音を立てて湿り気を帯び始めた。
「いや、やだ、あ……っ」
泣き喚いて首を振る。けれどアキくんは止まらない。的確に弱いところを擦り上げられ、拒絶とは裏腹に、快感が脳髄を痺れさせていく。
私の意思なんて関係ない。指の動きが激しくなり、目の前が真っ白に弾けた。
「あ、ああっ――!」
情けない声を上げて、身体がビクビクと痙攣する。
簡単に、呆気なくイかされてしまった。
シーツに突っ伏し、肩で息をする。涙とよだれで顔をぐしゃぐしゃにしながら。
「やだ、やだ……」
「……」
アキくんが覆いかぶさってくる。抵抗できずにいる私の耳元で、彼は続けて軽蔑しきった声で囁くのだ。
「ほら、結局淫乱だっただろ」
情けないが反論はできない。アキくんの冷徹な指先は、私が正気を取り戻す隙など一瞬たりとも与えてはくれなかった。
一度イかされた後の過敏になりきった粘膜を、彼はわざとらしく執拗に責め立てる。快感の許容量をとっくに超えているのに刺激が止まない。波が引く間もなく次の大波が押し寄せ、私の頭の中は白一色に塗りつぶされていく。
「ぁ、あ、あっ、あぁっ!?」
のたうち回り、シーツを掻きむしる。
指が増えたのか、動きが激しくなったのか、それさえも分からない。ただ、身体の奥底にあるスイッチを乱暴に連打されているような、暴力的な感覚だけが脳を支配する。
「うああああ、いや、いや、やめて、やだっ、あ、あ、あ!!!!」
獣のような絶叫が喉からほとばしった。
羞恥心も理性もかなぐり捨てて、私は必死に中を虐めるアキくんの手首を掴もうとした。けれど、汗で滑る手では彼の剛腕を止めることなどできず、逆に動きを妨げないようにと乱暴に払いのけられる。
「あぅ、あ、あ、やだ、おかしくなる、許し、許してっ、あ、あ!!!」
両手で自分の頭を抱え、髪をぐしゃぐしゃにかき回しながら、私は半狂乱で泣き叫んだ。腰が勝手に跳ねる。背中が弓なりに反り返り、筋肉がきしむほど強く強張る。それでもアキくんは止まらない。私の懇願など雑音としか思っていないかのように、無表情で、ただひたすらに最奥を抉り続ける。
「ゆるして、ゆるしてアキくん、ごめんなさい、ぁ、あ、あああああ」
限界だった。
引き絞られた弓が弾けるように、私の身体が大きく痙攣する目の前がチカチカと明滅し、制御を失った秘部から、大量の液体が噴き出した。
「は、はっ、あ、」
アキくんの手を、シーツを、びしゃびしゃに汚しながら、私は何度も何度もビクンビクンと無様に跳ね続けた。視界がちかちかする。まともに息が出来ない。
やがて、指が引き抜かれる。それに従って糸が切れた操り人形のように、身体がベッドの上に崩れ落ちた。
「はっ、はっ、はっ、ぁ、ぁあ、あぁぁ……」
焦点の合わない目で天井を見つめ、ひきつけを起こしたように浅い呼吸を繰り返す。自分の意志とは関係なく。口元から涎が垂れているのも拭えないまま、ただひたすらに。
けれど、一旦は指を引き抜かれたのだ。終わった、と安堵したのも束の間だった。弛緩した空気が漂う中、私の耳が、枕元でガチャガチャと何かを探る音を拾った。ぼやけた視線を向けると、アキくんがサイドテーブルの引き出しから、白い無機質な機械を取り出している。それがコンセントに繋がれカチリとスイッチが入れられた瞬間、と凶悪な振動音が部屋に響き渡った。
「ひ、あ……?」
本能的な危機感に、動かない体を無理やり起こそうとして──すぐに肩を押さえつけられた。
「休んでいいなんて一言もいってない」
「まっ、まって、それ、むり、アキくん、ほんとにむり……ッ、あ゙!!?」
私の懇願は、股間に押し当てられた暴力的な振動によって塗りつぶされた。一番敏感な突起に、容赦なくフルパワーのソレが食い込む。
「、〜〜〜〜!!!!」
にならない絶叫が自分の喉の奥底から上がる。快感なんて通り越している。まるでただの電気信号の暴力みたいだ。脳が焼き切れるほどの刺激に背中が海老反りになり、全身からぶわりと汗が吹き出す。
けれど、地獄はそれだけじゃなかった。
振動で痺れきった秘部に、再びアキくんの指がねじ込まれたのだ。外側からは機械的な振動、内側からは容赦のない掻き回し。逃げ場のない二重の責め苦に、私の理性が完全に粉砕された。
「やだやだやだやだ許して許してっやだ!!!! ごめんなさいっやめてっいやっそれづらい!!!」
もういい。もういい、もういい!もう飽きた、もうやめて。涙も鼻水も垂れ流しにして暴れ回った。シーツを握りしめ、足をバタつかせ、必死にアキくんの手から逃れようと腰を振る。けれどアキくんは私の腰を体重で完全にロックし、顔色一つ変えずに責め続けるのだ。どうしようもない。にげられない。つらい、にげたい。
「ごめんなさいっごめんなさいごめんなさいっごめんなさいっ、あ、あ、あ!!!」
「うるさい」
クリトリスを押し潰すように機械がグリグリと回され、中では指がGスポットを執拗に抉る。思考が真っ白になる。死ぬ、死ぬ、殺される。アキくんの指に殺される。
「あ゙あ゙あ゙あ゙!! しぬ、しぬっ、は、ああ、おかしくなる、ゆるして、ゆるして!!!」
喚いても、謝っても、泣き叫んでも、それでも許してもらえない。限界を超えた刺激が延々と続き、私の視界はチカチカと明滅を繰り返したまま、涙でぼやけていく。
痙攣し続ける指先にすら力が入らず、膝はガクガクと震え、シーツを蹴り上げる気力も残っていない。意識が遠のき、視界の端からじわりと闇が侵食してくる。
もういい。
このまま気絶してしまえば、この終わりのない責め苦から逃げられる。そう願って瞼を閉じかけた、その時だった。
乾いた音が、静まり返った部屋に響いた。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。遅れてやってきたのは頬を焼くような熱い痛み。衝撃で首が横に飛ばされ、強制的に意識の輪郭が引き戻される。頬を叩かれたのだと気がついたのは、数秒あとのこと。
「起きろ。肝心のお前が寝てたら仕方が無いだろ」
アキくんの声はどこまでも冷酷だった。感情の乗らない、作業の進捗を確認するだけのような事務的な響き。いっそそこに怒りや悲しみが滲んでいたら、まだ対処のしようがあったのに。見上げれば、彼は私の髪を乱暴に掴んで顔を上げさせ、蔑むような瞳でこちらを射抜いていた。
「ぁ、あ……あき、くん……」
「まだ終わってない」
無慈悲な宣告と共に、一度遠ざかっていたあの凶悪な振動音が、再び耳元で唸りを上げた。やめてという言葉は喉に張り付いて音にならない。アキくんの手は容赦なく過敏になりきった場所にふれて、再び電マを力任せに押し当てた。
「ひ、あああああああ!!?」
悲鳴が裏返る。指先が、機械の振動を媒介にして身体の最奥を直接かき乱す。もはや快感など微塵もない。神経を一本ずつ引き抜かれ、熱した鉄棒で内側を抉られているような錯覚。それなのに、体は無様に反応し、蜜を滴らせ、何度も、何度も、絶頂の波を無理やり引き寄せられる。もう何度目かもわからない。身体が弓なりに弾け、喉から掠れた空気だけが漏れる。意識は混濁し、もはや自分が誰なのか、何をしているのかさえ境界が曖昧になっていく。
「は……すごい顔」
肺が酸素を拒絶するように、呼吸が浅く、速くなる。ヒッ、ヒッ、という短い呼気。過呼吸特有の指先の痺れが全身に広がり、私はもう、恐怖と苦痛の混ざり合った泥沼の中で溺れるしかない。
このままだと、壊れる。本当に心が死んでしまう。
そんな本能的な恐怖が、私に最後のみっともない命乞いをさせた。
「あき、く、おねがいっ、せ、っす、っ、せっくすっ、しよ、あ、あ、っ、あ!!はっ、ぁ、あきくん、ね、お願い」
恥も外聞も気にしていられない。今はもう何がなんだっていい。この責め苦が終わるのなら。私は必死に彼に縋り付いた。普通の性交なら、こんな一方的な蹂躙よりはマシなはずだ。彼を受け入れ、彼と繋がれば、この地獄のような「作業」は終わる。そう信じて、私は涙でぐしゃぐしゃの顔を彼に向けた。
「はあ?」
「は、っ、はぁ、おねがっ、おねがいっ、しますっ、ごめんなさい、の、印に、あきくんの、なめるっ!ぜんぶ、のむ、のむからっ! だから、お願い、あ、あ、あ、っ、あ、」
自分でも何を言っているのか分からない。ただ、彼に屈服し、彼を満足させれば許される。そんな卑しい思考回路だけは持っている。アキくんは数秒の間私をゴミを見るような目で見下ろしていたが、やがて「……はあ」と深く、吐き捨てるようなため息をついた。
「別にいい。したい気分じゃない」
「は、あ、あ、なら、なんでっ」
なんで、こんなこと。カチリ、とスイッチが切られる。脳を揺さぶり続けていた振動が止まり、暴力的な静寂が訪れた。そうしてマッサージ機がサイドテーブルに置かれる音がして、私はようやく終わったのだと一気に脱力した。それが間違いだった。
ぐるん。視界が反転する。拒む暇などなかった。腕を掴まれ、無理やりベッドの上に四つん這いにさせられる。力が入らない体を支えるのが精一杯で、私は無様に腰を突き出した姿勢で固まっている。理解する間もない、あっという間の早業で。
背後からアキくんの気配が迫っているのが分かる。先ほどまでの姿勢よりも、ずっと深く、逃げ場のない空気感。
「ひ、あ、っ!?」
再び指がねじ込まれた。四つん這いの体勢は、前側にある一番敏感な場所──Gスポットを、これ以上ないほどダイレクトに暴き出す。そこをアキくんの硬い指が、内側から釣り上げるように、執拗に、再び激しく抉り始めた。加えて彼の手が再びあの機械を掴み、下から潜り込ませた。内側からは指、外側からはフルパワーの振動。その二つで私の秘部を挟み込み、圧し潰すようにして徹底的に虐め抜く。
「暴れるな。早く済ませたいなら大人しくしてろ」
「そ、そっ、ふ、ああっ、あうっ……」
そんなこと言われたって。大人しくなんて、していられるわけない。。腰を逃がそうとする私を、アキくんの空いた方の手が背中から強く抑えつけ、床へと圧しつけた。悪魔、悪魔、悪魔。やだ、つつらい、のに。サンドイッチにされた敏感な粘膜が、逃げ場のないまま全ての衝撃を受け止め、脳に直接、焼き切れるような信号を送り続ける。先ほどまでの苦痛が甘く思えるほどの、純粋な暴力としての刺激。「あ、あ、ああああ」。意味をなさない絶叫が部屋に響き渡る。パチン、もう一度頬を叩く音が響いた。痛い。痛いけど、その分少しだけ下半身の間隔がマヒして、救われたような気持になる。苦しいのに、辛いのに。考えれば考えるほどに、玉みたいな涙がぽろぽろとこぼれた。
「なんでそんなに被害者ヅラが出来るんだよ。元はと言えばお前が悪いんだろ」
「ごめ、なさい。ごめんなさい……っ」
「……はあ。ほら、それならチャンスをやる」
ちゃんす。体勢をまた変えられた。元の仰向けに。涙で滲んだ視界を一生懸命腕で拭うと、彼がカチャカチャとズボンのベルトを外しているのが見えた。肩で息をしながら、安堵感に深く息を吐く。ああ、ああ、よかった。これでひとまず、機械的な責め苦は終わるはず。彼だって、腰を振りながら正確に機械を当てられるほど器用ではないだろうし——
けれど、そんな考えは甘かった。ズボンから乱雑に取り出された彼の下半身は、すこしも……ほんの少しも、熱を持っていなかったのだ。「ほへ」呆けた声が出る。でも、だって、なんで。私のこと脱がせて、こんな、こんなことして、なんで一切反応してないの、それじゃ、それじゃ……。
「あっ……あ……あきくん、ほ、ほんとに、ほ、ほんとにおこってる、の?」
「はあ?何を今さら」
「だって、だってっこれ、なんでっ、あ」
分からないから。こんなことしてるのに全然たってなくて。アキくんが何を考えているのか、本気でわからない。理解できない。ぺち。頬にアキくんのやわらかいままのそれが押し付けられる。いつの間にか、膝立ちで彼が私の横まで移動していたのだ。当たるものの感触がぶにぶにとして気持ち悪い。
「舐めろ」
「やだ、やだっ……こ、こんなの、やだ、あきくんじゃない……」
「何を今さら。誰彼構わず媚びるのは得意分野だろ」
「ごめ、ごめんなさいっ、やる、やる、けど。こんな、れいぷみたいなっ……あ゛あ゛あ゛っ!!???!」
「うるさい」
精一杯の哀れっぽい声でひねり出された悲痛な訴えは、無慈悲な一言で切り捨てられた。直後、一度は離れていたあの凶悪な振動が、再び私の股間に押し当てられる。
「あ゛、あ゛あ゛あ゛っ!!??」
予備動作なしの最大出力。脳天を突き抜けるような刺激に、とぱちぱちと視界が瞬いて、意識がぐわんぐわんと揺れる。アキくんは私の頭を掴んで、自身の股間へと無理やり引き寄せた。
「ほら。口でちゃんと出来たらやめてやる。逆に、出来るまではずっとこのままだぞ」
「あ、ぅ、うぁっ」
無理だ。こんな状態で、そんな器用なこと出来るわけがない。けれどこの状態でアキくんの命令に従わないというのは、もっと無理な話だ。私が従わなければ、この地獄は永遠に終わらないのだから。その絶望的な事実だけが焼き切れた思考回路に無理やり命令を送る。やるしかない。ぜったいに。
ガクガクと震える手で、アキくんの太ももにすがった。目の前にある、力なく萎びたままの彼自身を、震える唇で迎え入れる。
「ん、ぐ、うぅ……」
含んだ瞬間、生暖かい感触が口内を満たした。必死に舌を動かそうとする。けれど、下半身から絶え間なく送られてくる激震が、私の全ての制御を奪っていく。
うまく、動かせない。唇をすぼめることさえままならず、ただ口を開けて、彼にしがみついているのが精いっぱいだった。普段だったらもっとうまくできるのに。くやしい。やめたい。ここからにげたい。絶え間なくだらだらと唾液が口の端から垂れ続けている。
「う、ぐ、ぅうううっ!!」
下強制的に下半身に与えられている快感の波が、容赦なく私を襲う。アキくんのモノを咥えたまま、身体がビクンと大きく跳ねた。アキくんの股間が、私のよだれで見るも無残に濡れていく。汚い。みっともない。でも、飲み込む余裕なんてどこにもない。
「あ、ぅ、れ、ろ……じゅ、……っ」
「は……。みっともない」
だって、だって。必死に頭を振って刺激を与えようとするけれど、すぐに限界が来る。股間の一点に集中砲火を浴びせられ、私の意識は数秒おきに白く弾け飛んだ。
「っ、っ……っ!!!」
イくたびに動きが止まる。間違っても彼のものを噛んでしまわないように、口を開けたまま硬直する。喉の奥からヒューヒューと間抜けな呼吸音が漏れて、けれどもその間も機械は唸りを上げて私の感度を限界までいじめ抜く。
完全にグダグダだった。奉仕なんて呼べる代物じゃない。ただただ与えられる快感にのたうち回り、その合間に許しを乞うように彼のモノに舌を這わせるだけ。
永遠のように感じられた。五分、十分……いや、もうどれくらい経ったのだろう。二十分は経過しただろうか。何度も何度も意識が軽く飛び、その度に強制的に引き戻された。下半身の感覚はとっくに麻痺している。痛みなのか快感なのか、それとも熱さなのか。何も分からないまま、ただ脳みそが溶けて耳から流れ出しそうな浮遊感だけが漂っている。
顎が痛い。舌の感覚もない。
アキくんの太ももは、私の涙と鼻水、そして大量のよだれで、ぐしゃぐしゃに濡れそぼっている。ひどい光景だ。
「ん……ぅ、んぅ……っ」
けれども意外なことに——下手くそでも、刺激は刺激ということだろうか。この20分で、アキくんの下半身は完全といっていいほどに大きく膨らんでいた。先端に吸い付けばそれなりにびくびく反応するし、くわえ込んだらちゃんと喉の奥で震えてくれる。時間はかかったけれど、あるいは、このままちゃんとアキくんのことをイかせられるかもしれない。そうしたら……。
そう思った矢先のことだった。後頭部をがしりと掴んで、彼の股間から頭を引きはがされる。
「あ、え」
アキくんは濡れそぼって屹立する自分のソレと、廃人のようにボロボロになった私を交互に見下ろし──あまりにも簡単に、冷たく言い放った。
「もういい」
肩を強く押される。当然、私に抵抗する力など残っていない。為す術もなく背中から布団の上に倒れ込んでしまう。
「も、い、って、どういういみ……」
返事はない。彼は私の足を抱えて、また四つん這いにしようとした。けれども完全に足腰が砕けている私の下半身はどれだけ頑張っても膝を立てることが出来なくて、べりゃりと嫌な音を立ててベットの上に沈んでしまう。濡れたシーツの感触が気持ち悪い。全部、私の噴いた潮。
「……はあ」
「あ、あ、アキく……」
「体力がなさすぎる。誰彼構わず盛ってる時間で訓練でもしてたらこんなことにはならなかっただろ」
阿婆擦れ。そう言ってパン、と雑にお尻を叩かれる。それはどっちの意味だろう、基礎体力の低さについてか、それともこの状況そのものに関してか。
ぐい、と腰を持ち上げられる。この状況で何をされるのか分からないほど、私も鈍くはない。
「あ、あ、まっ、まって」
「待たない」
「いま、いま、しんじゃう、しんじゃうから」
「なら死ね。責任は取ってやる」
「なんで……なんで、そんな酷いこと、言うの」
涙でぐしゃぐしゃになりながらそう漏らすと、アキくんは無言のまま、私の腰を掴む指に力を込めた ぬぷ、と。濡れそぼった入り口に、亀頭が押し当てられる。
「は、っ、は、はっ……」
入ってきた瞬間の熱さと圧迫感に、身体が過剰な反応を示している。枕カバーを両手で強く握りしめ、浅い呼吸を繰り返す。先ほどまでの玩具責めで、中の感覚は異常なまでに鋭敏になっているのが、触らずとも分かった。神経が剥き出しになっているような場所に、本物の、膨れ上がったアキくんの剛直が侵入してくる。
ず、ず。
ゆっくりと、肉壁を押し広げながら入ってくる異物感。
まだ半分だ。半分しか入っていないのに、内壁が痙攣し、脳みそが痺れるような感覚が背骨を駆け上がる。
「ぁ、あ゛、あきく、まっ、て……っ、まって、これ……だめなやつ、だめなやつだ……っ」
あまりの刺激に、喉からヒィヒィと引きつった音が漏れた。快感なんて生易しいものじゃない。腰が勝手に跳ねて、目の前がチカチカと明滅する。これ以上動かされたら、頭がおかしくなってしまう。本能が警鐘を鳴らし、私は掠れた声で必死に訴えた。
「これ、だめなの、だめなやつだから……!」
「……だから?」
私の懇願は、冷徹な一言で切り捨てられた。
「あ、」
躊躇なんて一切なかった。アキくんは私の腰をガッチリと固定すると、残りの長さを、一気に根元までねじ込んだのだ。最奥の、一番柔らかい場所に凶器が到達する重たい音が響く。
「あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛♡♡♡♡!!!!」
言葉にならない絶叫が喉からほとばしった。子宮口。身体の深い深い場所を、硬い物で容赦なくこじ開けられ、グリグリと押し潰される感覚。内臓が持ち上げられるような圧迫感と、そこから広がる強烈な痺れに、私は泣き叫びながら手足をバタつかせた。
「いやっ、いやだ、しぬ、こわれるっ、ぬいてっ、抜いてぇっ!!!」
本気で暴れた。爪を立て、シーツを蹴り、アキくんの下から逃れようと死に物狂いで身をよじる。けれど、そんな抵抗など彼にとっては赤子のぐずりでしかないらしい。
「暴れるな」
低く呟くと同時に、アキくんの大きな手が私の両手首を捕らえる。強引に背中側へと捻り上げられ、片手だけで腕を纏めて束縛される。
「あ゛、あ゛♡♡!!?!?」
肩の関節が悲鳴を上げ、上体が無理やり反らされる。
逃げ場を完全に失った私の背後で、アキくんがその束ねた両腕を、まるで持ち手か何かのようにグイと引っ張り上げた。
「っ、〜〜〜〜♡♡♡!!!!!」
角度が変わった。逃げようとする身体が強制的に固定され、逆に突き出しやすくなった腰めがけて、アキくんが容赦なく腰を打ち付け始める。
がつ、がつ、がつ。
斜め下から、内臓を抉り出すような強烈なピストン。束ねられた腕をハンドルにして、私の身体をコントロールしながら、彼は一点の慈悲もなく最奥を穿ち続ける。
「っ~~!!!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!! ゆるして、ゆるしてぇ゛っ゛♡♡♡♡!!!!」
子宮を直接小突かれるたびに、頭の中が真っ白に弾け飛ぶ。痛い、苦しい、気持ちいい、怖い。全ての感覚がごちゃ混ぜになって、私はただ獣のように泣き叫ぶことしかできない。
「なあ、分かっただろ。これまでどれだけ俺がお前に優しくしてやってたか」
「あ、あ、あ゛、あ゛っ、は、ごめ、ごめんなさいっ」
「言うこと、あるよな」
がつがつと子宮を殴りながら囁かれるから、もう何がなんだか分からない。いうこと。いうことってなに。わからない。わからないけど、わからないとはいえない。なにかいわなきゃ、なにか言って、ごまかさなきゃ。
「ごめ、ごめんなさいっ!!ゆるしてっ、わたしが、わるっ、あ゛あ゛♡♡!!!」
がつん、奥を殴られる。不正解、ちがう。
「もうしませんっ、もう、もうしないからっ、あ゛、あ゛♡♡!!ごめんなざい゛っ゛ごめん゛っ゛あ゛あ゛あ゛♡♡!!!」
腰を掴んで、さっきより深い角度で子宮をぐりぐりと押しつぶされる。大不正解。どうして。
「すきっ、あきくんのことすきっ、だいすきだからっ、あ、あ、あ゛!!!」
これは…………あ。
あ、とおもった次の瞬間には、下半身の間隔が変わっていた。ちゅぽん、そんな間抜けな擬音の幻聴があたまに聞こえる。「は、は、えっ、あ、え?」ぐりぐりと子宮を押しつぶしていた剛直の感触が消えたのだ。もうくるしくない。もう押しつぶされてない。でも、あれ、だって、アキくんの腰は、私のおしりにぴったりくっついていて。バックなんて通り越して、どこにも逃げ場のない寝バックの体勢で、びったりと。
「は……正解」
やさしく頭を撫でられる。あれ、あれ、これ、わたしのからだ、どうなって。こわくて少しも動けない。かたかたと手が勝手に震える。やめて、やめて、うごかないで。そんな言葉すら、もう唇から出なかった。
「は、あ、あっ、あきく、あきくんっ」
腰を引かれる。脳みそを直にかき混ぜられているような、そんな感覚。あ、あ、あ。ぼろぼろと涙がこぼれて、唇の震えを止められない。
「わ、わかり、あ、あっ……も、にどと、うわきしない、あきくんだけ、あきくんだけ……あ、あ、ちかう、ちかうから」
「前もそう言ってたな。もう二度とこんなことしない、って」
「ほんとに、ほんと、ほんとだから」
「信用できない。……だから、決めた」
どちゅ、腰を打ち付けられて、あ、あ。これ、これ。
「次からは、お前が浮気するたびに毎回毎回今日と全く同じことをする。それなら少しは抑止力になるだろ」
もう、返事が、出来ない。あ、あ。そんな意味のない音を繰り返す私の頭を、アキくんがしきりに優しく撫でている。それがなおさら不気味で、こわくて、なにをかんがえているのか、すこしも理解できなくて。
という、か。苛烈すぎる快感でかえって冷静になった頭が、とあることに気が付いてしまった。
「は……は、あき、く」
「ん……なんだ」
「ごむ……ごむっ、ごむ」
途切れ途切れの言葉で繰り返す。バックだから確認する余地もなかった。なかったけど。でも、これって、あ、あ、あ。
「言っただろ。抑止力にするなら、お前にとってのトラウマにしないと意味がない」
彼の手が私のお腹の下にもぐった。そうして、おへその少し下。パンパンに膨れ上がって、薄い肉を押し上げるほどに形を変えたそこを、人差し指と中指でぐりぐりと押す。脳みそが、まっしろになる。しんけいを、直に、嬲られてるみたいに。
「あ、あ、あ、ぬいて、ぬいてっ、それっ、しゃ、しゃれ、ならな、あっ、ああ」
「今抜いたら確実に子宮が引きずりだされるぞ。それでもいいなら無理やり抜くが」
「じゃ、ど、したら」
「さぁな。俺が射精して萎えたら自然に抜けるだろ」
そんな、そんなの、もう、詰んでるじゃないか。指先がすりすりと腹を撫でる。やだ、やだ。もうやだ。もうやだ、こんな、こんなの、やだ。
「わ……わかれる……」
「は?」
「もう、あきくんと、わがれるっ゛……!」
気が付いた時には、そんな言葉が口から出ていた。根本は私が悪いんだろう。それは分かる。でも、でも、こんな。こんなことって。度を越えている。こんなことをしている人間と、どうやって……どうやって、付き合えっていうんだ。無理だ。もう無理だ。わかれて、にげたい。この地獄から。
「……はーー……」
深く長く。私の鼓膜を震わせたのは、呆れとも諦めともつかない、重いため息だった。背筋が凍る。動物的な勘が、地雷を踏んだとけたたましい警鐘を鳴らした時には、もう遅かった。
ガシッ。大きな掌が私の後頭部を鷲掴みにする。
「あ、」
抵抗する間もなかった。そのまま強烈な力で、顔面を枕に押し付けられる。むぐ、と呼吸が遮断された。視界が真っ暗になる。柔らかい羽毛の感触と、自分の涙と涎の匂いが鼻腔に充満する。息が出来ない。苦しい。けれど、じきにそんなことを感じる余裕もなくなる。
「ん、ぐ、うぐぅっ!!??」
どすん。腰に、重機が追突したかのような衝撃が走った。手加減なんて微塵もない。さっきまでの、どこか私の反応を楽しむような余裕は消え失せている。ただひたすらに、怒りと制裁の感情だけを乗せた暴力的なピストン。
あ、あ、あ。
乾いた破裂音が、機関銃のように絶え間なく響く。速い。深い。重い。私の腰骨がアキくんの太ももに打ち付けられる音と、結合部から響く水音が混ざり合い、卑猥極まりないノイズとなって部屋を満たしていく。
「ん゛ーっ゛♡♡♡!! んーっ!! ん、ぐ、ううううっ゛♡♡♡!!!」
枕に顔を埋められているせいで悲鳴すらまともに上げられない。声にならない絶叫が喉の奥で押し殺され、行き場を失った熱が頭にのぼる。腰を打ち付けられるたびに、脳みそが頭蓋骨の中でシェイクされるような感覚。視界が真っ白に弾け飛び、思考の輪郭がドロドロに溶かされていく。
逃げられない。
頭はアキくんの手で固定され、下半身は完全に連結され、両手は背中でねじ上げられている。
人間としての尊厳なんて、もうどこにもない。ただの性処理の穴。怒りをぶつけるためのサンドバッグになったような気分だった。
(こわれる、こわれる、こわれる。ころされる。)
恐怖で、心臓が、破裂しそうだ。子宮の奥底を、硬い先端で何度も何度もノックされる。いや、ノックなんて生易しいものじゃない。内臓が悲鳴を上げている。お腹の中がめちゃくちゃにかき回され、熱い塊が出たり入ったりするたびに、私の正気が削り取られていく。
「んぅーっ!! あ゛、あ゛、あ゛ーーっ゛♡♡♡♡!!!」
息継ぎが出来ない。酸素が足りない頭で、私は必死にシーツを掻きむしった。殺される。このままじゃ、本当にアキくんに殺される。快感とか苦痛とか、そんな次元を超えている。自分が自分じゃなくなっていく恐怖。
いよいよ酸欠で意識が朦朧としてきたとき、不意に、後頭部の圧力がふっと緩んだ。私は金魚のように口をパクパクさせて、貪るように酸素を吸い込む
「はっ、はっ、ひゅ、あ、あき……♡♡」
涙で滲んだ視界の端に、冷え切ったアキくんの瞳が映る。彼は動くのを止めないまま、私の耳元に唇を寄せ、地獄の底から響くような声で囁いた。
「もう一回言ってみろ。誰が、誰と、別れるって?」
「やだっ゛、やだっ゛、やだあ゛ぁ゛……!」
答えられなかった。怖すぎて、言葉が出てこない。ただこの状況から逃げ出したい一心で、子供のように泣きじゃくりながら首を振ることしか。
「……ふーん」
アキくんがつまらなそうにそう言った。彼が求めていた答えじゃなかったらしい。
「あっ、や、ちが、ごめ、」
ドズンッ。
「お゛っ!?」
再び、顔面を枕に叩きつけられた。さっきよりも深く。そして、容赦なく。ごりごりごりごり。逃げ場のない子宮口を、硬いカリの先端で容赦なく擦り潰す。
「ん゛、ん゛!!」
背骨に電流が走った。全身が跳ねた。指先が硬直し、足の指が攣るほどに丸まる。内臓を直接手で掴まれて握り潰されているような、あるいは鈍器で内側から殴られているような、強烈すぎる刺激。
「ひっ、あ゛、あ゛、あ゛……っ!!」
声にならない悲鳴が漏れる。涎が止まらない。白目を剥いて痙攣する私を、アキくんは無感動に見下ろしながら、淡々と作業を続ける。
ゴリッ、ゴリッ。
嫌な感触が骨伝導で頭に響く。私の身体の大事な部分が、彼の楔によって蹂躙され、形を変えられていく。
「ひっ……ひっく……うえええ……っ」
「は、泣きたいのはとっちだと思う。本当に被害者ヅラだけは上手いな」
「ごめんなさい、ごめんなさいぃっ……ひっく、えぐっ、うえええ゛え゛っ……」
何に対して謝っているのかも分からない。ただ、許してほしい。この苦痛を取り除いてほしい。その一心で、私は壊れたおもちゃのように謝罪を繰り返した。
「謝らなくていい。なあ、さっきなんて言った?」
問いかけと同時に、ゴリッ、と一際強く抉られた。
「あ゛、ぎゅっ♡♡!?」
「聞こえない」
「わ、わかんない、わかんないよぉ゛……っ」
「俺と別れるんだろ? なら、最後にもっといい思い出作ってやるよ」
少し引いてから、勢いをつけて最奥を叩かれる。
「あ゛ぁあ゛!!」
「は……少し考えたら分かるだろ。俺と別れて、そのあと誰がお前と本気で付き合う?お前みたいなバカ女、俺以外に誰が飼えるんだよ」
「あ゛っ、あ゛っ、あ゛あ゛あ゛っ……っ♡♡♡♡♡!」
あきくんが何をいってるのかも分からない。彼がいってることはもっともらしいようなきがする。ちがう。詭弁だ。そんなことない。無いはずなのに、それが正論であるかのように諭されるから、まるで本当のような気がしてくる。ちがう、ちがうのに。
「わがっ、わがれない、わがれない、からっ……♡♡♡♡」
顔をぐしゃぐしゃにして、私は枕に叫んだ。プライドも意地も、何もかもかなぐり捨てて。
「ゆるして、ゆるしてっ゛、ひっぐ、あ゛、あ゛……♡♡♡! わかれない、別れない……っ♡♡♡アキくんがいい、アキくんじゃなきゃやだぁっ……♡♡♡」
なりふり構わない命乞いだ。
それを聞いて、ようやくアキくんの動きが止まった。
部屋に、私のひきつけを起こしたような泣き声だけが響く。
「……はあ。本当に、バカと付き合うと苦労する」
ふわり。今まで私を押さえつけていた手が、優しく髪を梳いた。そのあまりの温度差に、私は恐怖と安堵で震えが止まらない。ポンポン、と頭を撫でられる。まるで躾の行き届いたペットを褒めるように。
「ほら、これ」
「あ、ぅ……?」
ふわり。頭を撫でていた手が離れ、視界の端に無機質な長方形が差し出された。薄暗い照明の中でバックライトが眩しく光る。それは、他の誰でもない、私の携帯電話だった。
「えっ、あ」
「今日一緒に居た女に電話しろ。もう会えないって」
この状況で? 身体が繋がったままで? 中も外もぐちゃぐちゃに汚された、こんな無残な姿のままで?
「は……あと、で……ちゃんと言う、から……っ」
「今」
「ぁ」
けれど、拒否権などあるわけもなく。
アキくんの手が、私の震える指先に携帯を強引に握らせる。画面が涙で滲んでよく見えない。けれど、履歴の一番上にあるあの子の名前だけは、残酷なほどはっきりと認識できた。
「ほら」
短く命じられると同時に、腰をトン、と小突かれる。奥にある楔がその存在を主張し、私はビクンと肩を跳ねさせた。逆らえない。逆らったら、さっき以上の地獄が待っているだろうことが容易に想像出来てしまうから。ガタガタと震える親指で、発信ボタンを押した。
静まり返ったホテルの部屋に、呼び出し音が電子的な響きを落とす。
その音が、死刑台へのカウントダウンのように聞こえた。お願い、出ないで。寝てて。お風呂に入ってて。けれどそんな私の願いは、ほんの数秒であっけなく打ち砕かれてしまうのだった。
『……もしもし?』
繋がってしまった。電話の向こうから聞こえるのは、数時間前まで私が隣で笑い合っていたあの子の声。それに対して今の私は、ラブホテルのベッドの上、男に組み敷かれ、獣のように犯されている最中なのだ。
『もしもし? どうしたの、こんな時間に』
「あ……」
声が出ない。アキくんがじっと私を見下ろしているのが分かる。「早く喋れ」と無言の圧力をかけているのだ。
「……きょ、うは……ごめん」
必死に絞り出した声は、自分でも驚くほど掠れていた。
『ううん! 私こそ……なんかあの男の人、アキさんだっけ? すごいキレてたけど、平気だったの? 大丈夫?』
心配そうな声色が、罪悪感をさらに深める。彼女は何も悪くない。悪いのは私だ。なのに、私はこれから彼女を傷つけなきゃいけない。
「あ、その、けん、で……っ♡」
言葉が続かない。
その時だった。
ぬぷ、ん。
「ひっ、♡♡!?」
アキくんの腰が、ゆっくりと動いた。激しくはない。けれど、ねっとりと内壁を擦り上げるような、一番嫌らしくて、一番感度が高まっている場所をピンポイントで抉る動き。
『え? なに? 電波悪い?』
「っ、ううん、なんでも、ないっ……♡!」
必死に声を張り上げる。携帯を握りしめる手に力が入りすぎて、指関節が白く浮き上がった。アキくんは意地悪だ。私が電話に集中しようとすると、わざと動きを加えてくる。私が通話に気を取られて力が抜けた一瞬を狙って、奥へ、奥へと侵入してくるのだ。
「あのね、これからは、もう」
『うん?』
「もう、あえな、くて……」
『え……それって、どういう……』
あの子の声が困惑に染まる ごめんね。本当にごめんね。心の中で謝りながら、私は決定的な言葉を口にしようとした。
「私、やっぱり、アキくんのことが……っ、すき、だから……♡♡♡」
ずず、ずずず。
重い。アキくんのモノが、さっきまでよりもさらに大きく、硬く膨張しているのが分かった。私の言葉を聞いて興奮しているのか、それとも最初からそのつもりだったのか。内臓がパンパンに押し広げられる圧迫感。逃げ場のない快感が、足先から脳天まで駆け巡る。
「だか、ら……もう、れんら、く、っ゛……とれな、い」
『そっか……。分かった。……ねえ、本当に大丈夫? なんか声震えてるけど』
鋭い指摘に心臓が止まりそうになる。バレてはいけない。こんなことをされているなんて知られたら、なんて思われるだろう。彼がゆっくりと、私の上半身に覆いかぶさってくる。まるで恋人同士の抱擁のように優しく。でも確かにその動きは、獲物を追い詰める捕食者のそれで。
私の耳元に、彼の唇が寄せられる。
熱い吐息が鼓膜にかかる。
携帯の向こうのあの子には聞こえない、私だけの距離で、彼は低く囁いた。
「ほら、一回目、出すぞ」
「……ぁ♡」
思考が停止した。
直後、体内の最奥で、どくん、と何かが爆発する。薄い粘膜が、圧倒的な質量に押しつぶされる。
「ぁ……ぁ……♡!」
熱い。おもい、つらい。あたまのおくがちかちかする。
『もしもし? おーい、聞こえてるー?』
あの子の声が遠い。私は携帯を耳に押し当てたまま、声が漏れないように必死で唇を噛みしめた。けれど、無理だ。全身が痙攣する。目の前が真っ白になる。繋がっている部分からドロドロとした熱が広がり、脳みそまで溶かされていく。
「は、あ、ぁ、あぁ……!!!」
鼻から情けない声が漏れる。
涙がボロボロと溢れて止まらない。アキくんは私の首筋に顔を埋め、唸るように喉を鳴らしながら、腰をグイグイと押し付けてくる。最後の一滴まで、私の中に自分の証を刻み込むように。
『……もしもし? なんか変だよ? ねえ』
「っ、ご、ごめ、きるね、っ!」
もう限界だった。会話なんて成立しない。私は逃げるように通話終了ボタンを押し、その場に携帯を放り投げた。カラン、と乾いた音が床に響く。
「はっ、ぅ、あ、あぁ……っ、あき、く、ぅ……」
携帯が落ちたあともアキくんは離れなかった。射精の余韻に浸るように、彼はまだ硬さを残した自身を、私の中に埋めたままにしている。
いや、それどころか。
ぬる、り。
「あ、ひ……っ?」
わざとだ。彼は中に出したばかりの精液を、私の膣内に塗りたくるように、ゆっくり、ずりずりと腰を回し始めた。
ゴムなんてしていない。生暖かい粘液が、彼のと私のと混ざり合って、グチュグチュと卑猥な音を立てる。
「あ、や、あきくん、それ、ん、あっ……♡」
精子が、身体の奥に染み込んでいく気がした。あの子との電話を切らせて、その最中に中出しして、今こうして丹念に種付けされている。
「電話ごしに興奮したか? 変態」
耳元で囁かれる侮蔑の言葉すら今の私には甘い毒のように響く。腰を回されるたびに、お腹の中が熱くて、気持ちよくて、どうしようもない。私は涙でぐしゃぐしゃの顔を上げて、眼前にある彼の手に縋りついた。
「も、あきくん、だけにする……っ」
「……」
「あきくんだけにする、するから……っ♡」
懇願する私を見て、アキくんが満足げに目を細めるのが視界のふちで見える。その顔は、私が今まで見た中で一番恐ろしくて、そしてどうしようもなく、美しい。
Here’s looking at you.