初めは無礼な男の子だなあと思った。それだけだった。金髪のとげとげ頭に切れ長のおめめ。顔はかわいいけど礼儀のなってない子は好きじゃない。だけどまあ、私だって社会人なので、そこは飲み込んで社交辞令を口に出す。「よろしくね、デンジくん。これから大変なことも色「おー、っす」々あるだろうけど、お互い仲良くやれたら嬉しいな」視線が合わない。少し考えて、彼が私の目より先に胸を見ていることに気が付いた瞬間に、私の中のデンジくんの位置づけは決定していた。このクソガキ、可愛がってやるからな。マキマさんのお気に入りだか知らないけど、大人の世界の厳しさってやつを教え込んでやる。……と、そういう訳で始まった私とデンジくんの対人訓練である。既に隊長のシバキを受けていたらしいから(受けてまだこの生意気さ加減なのか? にわかには信じられない)、私が教えられることなんて少ないんだけど。というか、一個だけなんだけど。その名も「デンジくんにハニトラ耐性を付けよう」作戦。聞くところによると、少し前にハニトラに引っかかって痛い目を見たらしいから、ちょっとでも女慣れしておこうとのことだった。特異課が最近やたらときな臭いのはこの子が原因だとも聞いた。見た目にはただのチンピラに見えるけどな。何か、あるんだろうか。「それじゃあこれからデン「へえ」ジくんに授業を行います」「……まあ、返事については今は「見るなっつーなら出すな!」良いでしょう。こら谷間見ない!」「だから、見ないで耐えるようになろうねって授業でしょうにこれ!」ああもう全然話が進まない。 デンジくんは絵に描いたようなスケベなエロガキで、私が何度「こういうのが罠なんだからね」と忠告しても「ちゅうするから許してよ」「胸揉ませてあげるから大目に見て?」の一言でけろっと機嫌を直してしまうし、毎回本気で騙される。「じゃあ今日の授業はここまでで終わ「あ! おい待てよ!」り。予習復習はちゃんとしておいてね」「……なあに。今日はもう「オレまだちゅうも揉みもさせて貰ってねえぞ!」定時だし帰りたいんだけど」これだから嫌になる。というか、もうなんかちょっと笑ってしまう。一回くらい揉ませてあげてもいいかもな……とか思わされる。はっ。まさかそういう戦法か。 「デンジくんの調子はどう?」「まあまあですかねえ」「うまくいきそうかな」「どうでしょうね。……だけど」「だけど?」「……かわいいですね、あの子。少し愛着がわいてきました」「……そう」マキマさんは腑に落ちない顔をしている。ああいう男の子と接すること、今まであんまりなかっただろうしな。今まで周りの男性陣からは高嶺の花として扱われてきただろうし。 デンジくんとの関係性は絶妙に絶妙なカンジで進行している。デンジくんは結構ノリがよくて、授業終わりにご飯に誘い出すとちゃんとついてきてくれるし、面白半分で犬の真似してよ、なんて無茶ぶりすると、ちゃんとしてくれる。これも私が女だからか。だとしたらマジで授業の意味ないな。最終目標は私に塩対応が出来るようになること、だったりするんだけど。でもそんなところもちょっと可愛くて。「何を見ているの」「あ、ああ、マキマさん。これ……この前デンジくんとご飯に行ったんですけど、帰りに二人でガチャガチャを回して」「ガチャガチャ」「ふふ。子供っぽいですよね。……そしたら二人とも同じキーホルダーが出たから、お揃いで持ってるんですよ」「随分仲良くなったんだね」「そりゃあまあ。毎日授業をしてるとどうしたって情はうつります」「そう。じゃあデンジくんのことが好き?」「まさか。あんな乳臭い子供をどうして?」私があんな無礼な子供を好きな訳がない。どうしてそんなことを聞くんだろう。それからマキマさんと二人でお出かけをした。とてもとても楽しい時間だった。途中悪魔が出て大変なことになったけどマキマさんが命を挺して助けてくれて、私はマキマさんに命を救われた。うれしい。とても嬉しい。私の契約悪魔もマキマさんのことを好きになったそうだ。……命を助けられたのだから、私も、マキマさんのことを助けなければならないと思った。マキマさんの敵は私にとっても敵。いつかマキマさんと二人でおでかけした時に引いたお揃いのストラップをジャケットの中に入れて市街地に出る。マキマさんのこと、私が守らなきゃ。契約悪魔に内臓を差し出してでも。だってマキマさんは私のことを助けて、くれ、て。私とマキマさんは恋人同士で。好き。大好き。また私のことをデートにつれていって。ぱちぱちと眼の前で花火が散っている。どこからかエンジンの音がする。どうして? だって私は悪魔と戦ってい、て。敵は。ぱちぱちと瞬きをする合間に