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全 12,966 文字

 ここ最近のデンジくんの休日は、もっぱら補習のためにあてがわれている。要するに、普段サボりまくっている分を取り戻す地獄の集中授業デー。

 朝十時から夕方五時までみっちりびっちり、漢字ドリルと数学の問題集と英単語帳。可哀想だけどしょうがない、これだってデンジくんの将来の為だもの。

 とはいえノルマは決まってるし、きちっと頑張って早めに終わらせることが出来たら、残りの時間は二人でお出かけしてもいいかなぁとか思ってたんだけど——デンジくんは開始三十分で「もう無理」と言い、一時間で「マジで死ぬ」と言い、一時間半でテーブルに突っ伏して動かなくなった。

 私はそんなデンジくんの横で、赤ペンで丸つけをしながら、時々「ほら、次のページ」と尻を叩く。今日の服装は清楚なワンピース。休日だから。淡い水色の膝下くらいの丈の、なんでもないワンピース。でも前にデンジくんが「それかわいい」と褒めてくれてからは、頻繁に着るようになった。私の些細な乙女心って、なんてかわいいんだろうね。

「んあ〜~、もうむり〜〜〜」

 デンジくんがテーブルから転がり落ちて、床にごろんと仰向けになった。休日返上でお勉強を教えてる上司を目前にして、なんてやる気のなさだ。いっそ清々しい。

「ねえデンジくん、まだ午前中だよ」

「死ぬ、副隊長に殺される」

「勉強じゃ人は死なないよ。ほら、起きて」

「やだ、きゅーけー!」

「もう、まったく君は……」

 私の叱責もガン無視で、なにやら床をごろごろしている。テーブルの下を転がって、ベッドの横まで行って、またこっちに戻ってきて。なんか、大型犬みたいだ。駄が付くかんじの犬。

「んあ〜〜〜」

「もう、なにやってんの?」

「だらだら」

「それは見てたら分かるけど」

 ベッドの下に手を突っ込んで、天井を見ながらぼんやりしている。

「ベットの下綺麗。キチョーメンだな」

「あんまりじろじろ見ないでよ、言ってもそこまで頻繁に掃除してるわけじゃないし……」

「んー……あ。なんかある」

「え」

「箱? なんか小さい箱がある」

 それを指摘された途端、心臓が止まりそうになった。ずっと忘れていた記憶が、ぎゅいいいいいい、と形を取り戻す。あ、まって、それ、やばいやつ。

「あ、あ、あ、デンジくん、それは」

「んしょ……なんか結構奥にあんな……なに入れてんのこれ」

「やめて! それはだめ!! 見ないで!!!!」

 飛びかかろうとしたけど遅かった。デンジくんは既にベッドの下から小さな箱を引きずり出していて、蓋を開けていた。

 中身を見たデンジくんが、一瞬きょとんとして——それから、ゆっくりとこっちを向いた。

「…………」

「…………」

 沈黙。

 箱の中には。ピンク色のローターと。あんまりそれっぽく見えないデザインの、丸っこい、でもちゃんと分かる人が見たら分かる、そういう用途……要はまあ、そういう棒が、入っていた。

 死にたい。

 今すぐこの場で死にたい。

 てかこいつも殺す。このクソガキを殺して私も死んでやる。

「……副隊長」

「…………」

「なにこれ」

「…………」

 答えられない。というかそもそも口が硬直して動かない。顔面の温度が体温計の上限を振り切っている。

 デンジくんがローターを手に取った。底のスイッチを見つけて、ぱちん。

「……すげー震えてる」

 感心したように眺めている。やめて。やめてよ。それを持ってそんな顔しないで。

「…………」

「なあ、何って聞いてんだけど」

「…………」

「エロ本で見たことあるから知ってるぜ。これ、エッチの時使うやつだよな」

「…………」

「なんでこれ、副隊長が持ってんの」

「…………」

「おいってば」

 黙秘。完全黙秘。何を言われても口を開かない。開けない。これは——これは、デンジくんのことを好きになってから、でもデンジくんを好きになるのはまずい、部下だしてかそもそも人間じゃないし子供だしめっちゃ子供だしホンマに全てにおいての諸々全部がまずすぎる、どうにかしなきゃ。というかこんなことを感じてる私ってめちゃめちゃ欲求不満なんじゃないかとか、色々迷走してた時期に買ったやつだ。好きな人に触れられないなら自分でどうにかするしかないじゃないか、って、顔から火が出そうになりながらネットで注文して、届いた段ボールを震える手で開けて。

 つまり、全部デンジくんのせいだ。

 でもそれは絶対に言えない。

 地面に座っていたデンジくんがすっと立ち上がった。

「わ……えっ、あ、あ、な、なにっ、なに」

 何をするのかと思ったら、私の両脇に手を突っ込んでくる。そのままベットサイドに私を設置するみたいに座らせて、そのまま、膝の間にするりと自分の体を割り込んできた。な、な、なに。

「ぁ……やだ……な、なにするの……」

「……」

「ちょっと……」

「副隊長が答えね~から俺も答えねえ」

 ぱか。そうしてデンジくんの両手が膝を左右に押し開いた。「きゃあ!」思わず悲鳴を上げてもデンジくんは止まらない。ワンピースの裾が太腿の上でくしゃりと寄る。慌ててスカートの裾をぐいっと引き下げようとした。見せたくない。こんな状況で。

「裾自分で持ち上げてろ。俺今怒ってるんだけど」

 声のトーンが変わった。

 それまで、いってもおもしろ半分のからかうような声だったのが、一段低くなった。これまでは怒ってそうな声色じゃなかった。なかったからこそ、急に出てきた怒気にびっくりした。

「ぁ……ご、ごめんなさい」

 反射的に謝っていた。それで……い、言われた通りに、ワンピースの裾を、自分の手で、持ち上げて見せる。太腿が露出して、下着が見える。薄いブルーのなんでもない下着。

 デンジくんの目が私の下着をじっと見ている。下から見上げる形で。

「他の誰かと使ったのかよ」

「ち、ちがう、ひとりで、使った」

「なーんか……信用出来ねぇ」

「ほ、ほんとに、ひとりで使ったんだもん、嘘じゃない!」

 嘘じゃない。本当にひとりだ。デンジくんのことを考えながら、ひとりで、ベッドの中で、声を殺して。それこそ死んでも言えないけど。

 きゅ、唇を噛む。……とはいえ、私の過去の性変遷がそれなりに入り組んで拗れていることもまた事実で。それに嫉妬されてるのは嬉しいけど、こういう時は、ちょっと辛い。手放しに信用されない自分が情けない、し。

「ふぅん?」

 デンジくんの目が、疑わしげに細められた。

 それから。

「じゃあ自分で使って見せて」

「へ……?」

「自分でしてるとこ、見せて。そしたら信じる」

 頭が真っ白になった。

「で、出来ない、そんなことできない!」

「へえ」

 低い声だ。あんまり、普段は私に聞かせてくれない声。だからこそたった二文字の「へえ」に圧が詰まっていて。

 恐る恐る……でも真っすぐ、真正面からデンジくんの目を見た。冗談を言っているんじゃない。本気だ。してるとこ、見せてって、つまりは。少し想像しただけで、顔が燃えるように熱くなる。耳の先まで赤くなっているのが自分でも分かる。

「し、します……」

「それでよし」

 でもこの状況で断るわけにもいかず。

 デンジくんが少し後ろに下がった。私の足の間から出て、床にあぐらをかいて座る。見物席とばかりに。

 う、うううう。なんでこんなことに。

 しにたいしにたいしにたい、帰りたい。

 ここが家だけど、ここから逃げ出して安住の地を求めたい。

「俺は手ェ出さないでここで見てっからさ、普段みたいにやって」

「……ぅぅぅ」

 涙目になる。でも、でも、しかたない。デンジくんが怒ってる。怒らせたくない。この子に嫌われたくない。

 嫌われるくらいなら……し、死ぬほど恥ずかしいことの方が、まだ、まだマシだ。

 おずおずとローターを手に取った。

 ピンク色の小さなそれが手の中で細かく震えている。スイッチはさっきデンジくんが入れたまま。ぶるぶるぶるぶる。手のひらに伝わる振動が、緊張で冷えた指先に温度を伝えてくる。

 足が勝手にもじもじしてしまう。自然と膝が閉じようとする。閉じて、隠したい。見られたくない。

「あ? 足閉じんなよ。見えねーじゃん」

「だ、だって、はずかしい……」

「……」

「う……」

「…………」

「う、うう、わかったよぉ……」

 デンジくんの無言はどんな言葉より怖い。

 仕方がないので、ほんっとうに泣きそうになりながら、足を、ぱか、って開いた。

 ベッドの端に座って、膝を左右に開いて、ワンピースの裾は自分で持ち上げたまま。絶対に下着が丸見えだ。デンジくんが下から見上げている。こんなに恥ずかしい状況、人生で一度もなかった。

 震える手で、ローターを下着の上からそっと当てた。

「ん……♡」

 小さな声が漏れる。振動が、布越しに伝わってくる。いつもは暗い部屋で、布団の中で、一人きりでしかしないことを——好きな人の目の前で。明るい部屋で。見られながら。

「普段何考えながらすんの」

「……わかん、ない」

「わかんないってことねぇだろ」

「う……」

「何考えながら、してんの」

「……、…………で、でんじくんの、こと、かんがえて、してます……」

 いよいよ涙がにじんでくる。恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしいってレベルじゃない!

「っはは、マジで俺の事大好きじゃん」

 デンジくんが笑う。それがまた嬉しそうで、こんな状況なのに、デンジくんが嬉しそうなのが、嬉しくて。我ながらバカすぎる。惚れた弱みとか、そういう次元じゃない。

 ……だってそもそも、この人に好かれたくて、きられたくなくて、私はこんなことをしている、んだし。


 下着を脱いだ。

 ワンピースの裾を自分で持ち上げたまま、片手でローターを持って、もう片方の手で下着をずらして、脱いだ。足首まで降ろしてぽいっと床に落ちた。……デンジくんは胡坐をかいて、じいっと私の顔を見ている。恥ずかしくて恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうだ。でも羞恥心で人は死ねないから、続きをやるしかない。……直に触れた。ローターを、直接、自分の一番敏感なところに当てた。

「ぁっ……♡♡」

 声が出る。布越しとは全然違う。振動がダイレクトに伝わって、腰がびくんと跳ねるのを制御できない。

「ぅ、ぅ、デンジくんっ……」

「ん、何」

「あ……ちがっ、なまえ、呼んだだけ……」

「……ああ! そういうことか、わりーわりー」

 分かってるくせに!

 絶対分かってるくせにとぼけてる!!

 責め立てたいけどそんな余裕はなかった。ローターを当てたまま指が動く。円を描くように、上下に、小刻みに。いつもの——いつもベッドの中で一人でしているのと同じ動き。暗い部屋で、布団を被って、声を殺して、デンジくんの顔を思い浮かべながらする時の動き。

 違うのは、デンジくんが、本物のデンジくんが、目の前にいること。

「あ、……♡う……」

 声を殺す癖が出て唇を噛む。でもデンジくんの視線が「隠すな」と言っているのが分かるから、無理やり唇を開いた。甘い声がこぼれ落ちる。

 ローターを当てる場所を変えた。一番上の、いちばん感じるところ。いつもはここを触ると三分も持たない。

「ぁ、あ、あっ……♡♡♡」

 腰が浮く。足先がぎゅっと丸まる。足を開いたまま、デンジくんに全部見られたまま——

「でんじくんっ……すき……すきっ……♡♡♡」

 名前を呼びながら、好きって言いながら、自分で自分を追い詰めていく。恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。でも気持ちいい。好きな人に見られながらだと、一人の時の何倍も感じる。体が勝手に反応する。

「っ、あ、ぁ♡♡」

 イった。デンジくんの目の前で。足を開いたまま。ワンピースの裾を自分で持ち上げたまま。体がびくびく痙攣して、ローターを持つ手が震えて、太腿の内側が濡れている。恥ずかしいところが全部全部丸見えだ。死にたい!

「はふ……お、終わった……」

 けれどもそれもこれでおしまい。脱力して後ろにぱたんと倒れた。ベッドの上に仰向け。天井が揺れている。呼吸が荒い。

 でもその安堵は10秒も続かない。

「んじゃこっち」

 デンジくんが、ディルドを差し出していたから。

「え、あ、え?」

「こっち、なんか……パッと見なんだかわかんねーけど、同じ箱に入ってたってことは、そういうことに使うやつだろ? ほら、これも」

「や、やっ、もう、やったじゃん!」

「こっちはまだどうやって使うのか見てない」

 にっこり。悪魔みたいな笑顔だ。

「…………」

 抵抗する気力がない。さっきイったばかりで体に力が入らない。それに恥ずかしさの閾値が一回壊れてしまったから、もう何をしても同じだという諦めもあったのかもしれない。

 ディルドを受け取った。

 丸っこくて、一見するとそういうものには見えないデザイン。でも用途は一つしかない。仰向けのまま、膝を立てて、足を開いた。自分で。もう言われる前に。言われてからやるより自分からやった方がまだマシだ。ほんの、ほんの少しだけ。

 ローターのスイッチを入れ直して、自分の中に——ゆっくりと滑り込ませた。

「ぁ……♡♡」

 するっと入る。さっきイったばかりだからぬるぬるで。ローターが中で震えて、内壁を振動が這い回る。

「っ……ほ、んと、に、やるの……?」

「……それ、今更聞くか?」

「う……」

「ほら、頑張れ」

「うぅ~~……」

 それで……ディルドを、入口に当てた。

 二つ同時は初めてじゃない。一人の時に何度かやったことがある。でも見られながらは初めて。(そりゃそうなんだけど。)デンジくんが床に座ったまま、やっぱりじっとこっちを見ている。

「んっ、ぅぅ……♡♡♡♡」

 ローターが中にあるところに、さらにディルドが入ってくる。圧迫感、くるしい。中がぱんぱんに詰まる感覚。きつい。きついけど。

「でんじくんっ……♡♡」

 名前を呼んだ。目を閉じて、デンジくんの顔を思い浮かべて、いや、目を開ければ本物がいるのに、なんで閉じるんだ。恥ずかしいから。それ以外の理由なんてあるわけ無い。

「目開けろよ」

 でもやっぱり、見透かされた。

 目を開けるとデンジくんがこっちを見ていた。面白そうに。興味深そうに。そして少しだけ、目の奥がぎらぎらしている。ああ、もう、そっちがその気ならこっちにだって考えがあるんだよ、って。煽るだけ煽ってやるつもりで、見せつけるようにディルドを動かし始めた。中で、奥を、とんとんと突く。

「あ、ぁ、ぁっ……♡♡♡」

 頭おかしくなりそう。恥ずかしさと気持ちよさが混ざって、ぐちゃぐちゃ。もうなにがなんだか分からない。

「でんじくんっ、すき、すき……♡♡♡」

 言ってしまう。止まらない。好きって言いながら自分で自分を犯している。

「おくごりごりってされるのすきっ♡♡ すきすきすき♡♡♡」

 テンションがぐちゃどろで、恥ずかしくて死にそうなのに、口が勝手に動く。普段デンジくんにされて気持ちいいことを、自分の手で再現しながら、何が好きなのか全部口走っている。

「でんじくんのゆびすきっ♡♡ おくぐりぐりってされるのすきっ♡♡♡」

「おー……」

 デンジくんが、感心したような、呆れたような声を出した。もうだめ。もう恥ずかしいとか考える余裕がない。ディルドを奥まで入れて、ぎゅう、と。ローターが中で震えたまま、一番奥を、ぐりぐり。

「あ、あ、きもちっ……♡♡ デンジくんっすきすきすきすきすき……♡♡♡♡」

 足を開いたまま。足先がぎゅーって丸まる。お腹の奥がきゅうって締まって、おっきい波が来る。

「いくっ、いく、すきっ……♡♡♡」

 好きって叫びながらイった。

 足を開いたまま。恥ずかしいところ全部丸見えの状態で。中に入れたローターとディルドがそのまんまで。体がびくびくびくって痙攣して、仰け反って、涙がちいさくぼろっとこぼれて。

「…………♡♡♡」

 動けない。

 両腕が左右にだらんと落ちている。ディルドを持っていた手も力を失って、お腹の上に転がっている。足は開いたまま。閉じる力がない。天井がぐるぐる回っている。呼吸がはあはあ荒い。涙でぼやけた視界の端に、デンジくんが見える。あれ。天井みてるのに、なんで……。

 デンジくんが立ち上がっていた。

 ベッドの傍に来て、私の顔を、上から覗き込んでいる。

「……っ、あ゛ー」

 デンジくんの声が掠れていた。耳が赤い。首まで赤い。息が少し荒い。

「すげー可愛かった。っていうか、えっっっっっっろ……」

「でんじくんが、やらせたんじゃん……」

「でもやったのは副隊長じゃん」

「またそれ……♡」

 もう怒る気力もない。ぐったりしたまま、デンジくんを見上げている。全部見られた。全部。普段一人でしていること、考えていること、何が好きなのか、どこが気持ちいいのか。全部。

 デンジくんの手が私の頬に触れた。涙を拭うように。親指で、やさしく。

「信じた」

「えっ♡♡」

「一人で使ってたってこと。信じた。……つーかさ」

 デンジくんが、ベッドの上に膝をついた。私の体に覆いかぶさるように。

「めっっっっっっっっっっっっちゃエロ」

「……」

「めちゃめちゃエロかった。サイコー、マジで」

「でんじくん……」

「ん」

「……そういうばかっぽいとこ、すき」

「知ってる。今めちゃくちゃ見た」

「うー……」

 デンジくんの、それが。もう完全に元気になっている。頬っぺたに近い。熱い。生々しい存在感が、視界を埋めている。

「んでも、あれ遣う時は一人ですんの禁止な」

「ぅ、あ」

「ムラムラしたら俺呼べばいーじゃん。そういう話なら俺いつだって飛んでくるし」

 そういう問題じゃない。呼べるわけないでしょう、夜中に、「デンジくん今すぐ来て、ムラムラしたの」なんて。

「んで、もーいっこお願いしていい?」

「……なあに?」

「舐めながらしてるとこ、みたい」

「はああ……?」

「な、だーいすきなデンジくんからのお願い。……いーだろ?」

「も、さんざんみせたじゃんっ、まだ信じてないの……」

「信じた信じた、それに関しては、すげー信じた。でも見てぇの。副隊長が俺の舐めながら必死にオナニーしてるとこ、シンプルにエロそうだから見たい」

 馬鹿じゃないの。というか馬鹿だ。この男は本物の馬鹿だ。なんでそんなことをさらっと言えるんだ。デリカシーという言葉を知っているのか。一応、国語の授業でも道徳の授業でも教えたはずなのに。

 でも。

 でも、言われた通りにしてしまう私がいる。

 仰向けのまま、横を向いてデンジくんのそれに唇を寄せた。いつのまにやらズボンのベルトが外されてて、とっくに剥き身。ちょっぴりすえた匂いがする。石鹸の匂いと、汗の匂いと、あと、誤魔化しようがないデンジくんの匂い。

 ちゅ、と先端にキスをした。それから、舌先でそっと舐める。

「ん……♡」

 しょっぱい。あったかい。脈打っている。生きている温度が舌に伝わってくる。ちょっとびくびくしてて、かわいい。そのまま片手で自分の下に手を伸ばした。直接指で一番敏感なところに触れる。なにやってんだろ、ほんと、わたし……。

「ぁ……♡♡」

 デンジくんのものを舐めながら、自分で自分を触っている。さっき二回もイったばかりの、まだ敏感な場所を。

「あ゙ーーーー。分かってたけどこの景色エッッッロ……やべー、かわいー」

「ん、ちゅ……♡♡」

 口を離せない。離したら何か言ってしまいそうだから。恥ずかしすぎて。

「マジで今世界で一番副隊長のこと好き……」

 悔しい。腹が立つ。腹が立つのに嬉しい。指を中に入れた。自分の指を二本。さっきディルドを入れた後だからすんなり入る。

「ん、ぅ……♡♡」

 デンジくんの物を舌で転がしながら、奥の弱いところを指先でとんとんと叩く。

 もうめちゃくちゃだ。何をしているんだ私は。人のものを舐めながらオナニーをしているとか、信じられない。信じたくない。でも気持ちいい。

「ちゅぷ……ん、ちゅ……♡♡♡」

「はぁ〜……やっべ、副隊長の口めちゃくちゃ気持ちぃ……」

 褒められると嬉しくて、もっと頑張ってしまう。舌を使って、先端をくるくると舐め回す。同時に指も速くなる。中の弱い場所をこねるように。

「ん、ぁ、あっ……♡♡♡」

 声が漏れた。口が塞がっているから、くぐもった甘い声。デンジくんの体がぴくりと反応した。私の声で感じたんだ。それが分かると余計に声を出したくなる。

 でも、口を離した。唾液の糸が引いて切れる。

「も、いいじゃん、ふつうのえっちしようよ……」

「えーやだ。カワイイからあと五時間くらい見てたい」

「五時間もやってたら私の指が死ぬ!」

 あと股間も死ぬ。物理的に。もう既に三回イっているのに、これ以上自分でいじり続けたら体が壊れる。

 デンジくんは渋々って顔をした。

「ん~……ならまた時々見せて」

「やだ」

「まじでたまにでいーから、見たい」

「本気で死にたいくらい恥ずかしいから絶対にいや!!」

「もったいねーだろ、せっかく買ったのに使わなかったら」

「捨てる! こいつらは今日限りで捨てる!! っていうかもう一人でするなって言ったのデンジくんじゃん!!」

「一人ですんのはダメだけど、俺の前ですんのはいいんだよ!」

 なんて自分勝手な道理だ。むう、とほっぺたを膨らませた。デンジくんを睨みつける。デンジくんは悪びれもしない顔で、ちいさくにやりと笑った。

「それなら最後に、もうちょい使ってやんねーとな」

「な……なに、何する気……」

 返事を待たずに私の体を引っ張った。ぐいぐい、ベッドの上から引きずり出して、自分の体の方に寄せる。

 デンジくんがあぐらをかいて、その足の間に私の体を入れる。対面じゃなくて、同じ方向を向いている。背中がデンジくんの胸に当たる。後ろから抱きしめられる形で——足を左右に開かされた。膝の外側に、私の膝が引っかかる。

「ちょ、こ、これ——」

「いいから」

「よくない!」

 ディルドを手に取ったデンジくんが、それをあてがう。何をされるのか察しがついて体が固まるけど、それさえお構いなしに。強張ってるの、気付いてるくせに!

「ひぁっ♡♡♡!!」

 ごり、ごり。角度が分からないのか、途中途中突っかかりながら、入ってくる。自分で入れた時とは全然違う。角度も、速度も、力加減も。デンジくんの手で入れられると、なんていうか容赦がない。

 ごちゅごちゅごちゅごちゅ。

「ッ♡♡♡♡♡!!??!?」

 激しい。手の時の要領で動かしてるから。でもディルドだから太さがあって、奥に当たるたびに子宮が揺さぶられる。

「っ゛、こぇ゛ッ゛や゙ら゙や゙ら゙や゙ら゙や゙ら゙♡♡♡♡♡♡!!!!!!」

 悲鳴。本気の悲鳴で逃げようとした。体をよじって、デンジくんの腕から抜け出そうとした。でも後ろからガチガチに抱きしめられていて、びくともしない。腕が鉄の檻みたい。普段は確かに頼りになるけど、いまはとっても、つらい!

「てかこれサイズあってねーじゃん。俺のよりは小さいけどやっぱ副隊長にはでかいだろ」

 そんなの私がいちばん分かってる!!

 分かってる、からこそ、それ込みで買ったのだ。デンジくんのがあんまりにもおっきいから、体を慣らすためにも使っていた。でも今のこの状況でそんな説明を——

「ぁ、ぁぁ、あっ♡♡♡♡!!」

 言えるわけない。言葉が出ない。ディルドが奥を突くたびに、声が全部喘ぎ声に変換される。

 ぐりぐりぐり。

「あ゙ぁっ♡♡♡♡♡!!」

 子宮口のあたりをディルドの先端でこねるように回された。背中がのけぞる。デンジくんの胸に後頭部がぶつかる。

「ん……でもちょっと激しくやりすぎか。ごめんごめん」

 それで今度はゆ〜っくり。ねっとり。焦らすみたいに、ねちっこいピストン。奥まで入れて、ゆっくり引いて、また奥まで。

「ぁ……あ……ぁぁ……♡♡♡♡」

 さっきまでの激しさとのギャップで体が混乱する。中がぐちゃぐちゃに反応する。あたまがぽやぽやしてる隙を狙って——狙ってかどうか、は、わからないけど。デンジくんの手が、空いた方の手で、入口を、指で広げた。

「ひっ♡♡♡!!」

 見られている。入るところが。ディルドが出入りするところが。デンジくんの目の前で、全部丸見え。

「あー、マッッッッジでエロ……いいなこういうの、たまには。なあこれ絶対捨てんなよ。また使いてぇから」

「っ……やだ、やだ……♡♡!!!」

 もうそれしか言えない。頭が回らない。気持ちよすぎて。怖くて。恥ずかしくて。全部混ざって、でもデンジくんは抜いてくれない。ごちゅごちゅごちゅ、と容赦なく動かし続ける。ぐりぐりぐり。奥の弱いところを、先端で押し回す。

「っっっ♡♡♡♡♡♡!!!!」

 イった。もはや今日だけで何回目か分からない。体がびくびく震えて、デンジくんの腕の中で跳ねる。でも止まらない。余韻の中で動かされて、すぐに次の波が来る。

「ぁ、ぁ、も、む、り……♡♡♡♡」

 さらさらした愛液とも違う液体が垂れて、自分の意志とは関係なく、体が勝手に。太腿を伝って、シーツに染みが広がる。

「おっ、すげ」

「やっ、やらっ……♡♡♡♡」

 ばしゃ。二回目。もう制御不能だ。奥をこねられるたびに、体が勝手に反応して止められない。立て続けに三回目。

「あ゙、あ゙……も、でないっ……♡♡♡♡♡」

 出なくなった。水分がなくなった。体が絞り出すものがもうない。でも手はまだ動いている。逃げたいのに腰をがっちり掴まれていて逃げられない。体はイこうとするのに出るものがなくて、空振りみたいな痙攣だけがびくびくと続く。

「ぬいへ……♡♡♡ ぬいてぇ……♡♡♡」

 もうそれしか言えない。壊れたレコードみたいに同じ言葉を繰り返す。「ん……」デンジくんがようやく、ようやく、ディルドの動きを止めた。ずるりと引き抜かれて、中がからっぽになる。

「ぁ……♡♡♡」

 助かった。終わった——と、思うのと同時に、体をうつ伏せにひっくり返された。

「え」

 腰を持って四つん這いにされかけたけど、腕に力が入らなくてぺしゃんと潰れる。デンジくんが腰だけを持ち上げる。顔はシーツに埋まったまま、お尻だけが上がっている状態で。

「ほら、待ちくたびれた本物だぞ~、って」

「は、は、む、むぃ、いまむぃ、あ、ぁ」

 あ、あ、あ。ぐちゃぐちゃの入口に熱いものが押し当てられた。おもちゃとは比べ物にならない熱さ。ちゃんとどくどく脈打っている。ちゃんと、いきてるやつ。

「ぁぁっ♡♡♡♡♡」

 ディルドとは違う。全然違う。太さも、熱さも、体の中で脈打つ感覚も。それに、なにより、これ、ちゃんと、デンジくんだもん。

 子宮のあたりを、先端でやさしく、よしよしするみたいに押す。

「ぁ、あ♡♡」

「ほら、おもちゃとどっちが気持ちいい?」

「でんじくん、でんじくんのがいい、だいすきっ……♡♡」

「ん、よしよし」

 機嫌を良くしたデンジくんがそのまま腰を振り始めた。最初はゆっくり。奥まで入れて、引いて、また入れて。それからすこしずつ速くなっていく。いつもと、おんなじやつ。

「ぅ、あ、ぁ……♡♡♡♡」

 声が出る。枕に顔を埋めているのに、くぐもった声が漏れ出す。

「あ、いい事思いついた」

 デンジくんの動きが止まった。ひとまずって感じで、中が一旦からっぽになる。

「んぅ……??♡♡」

 それで、空っぽになった隙に、何かが、中に、入れられた。

 ぶるるるるるる。

「ッッッ~~~~~♡♡♡♡!!!!???」

 ローター。さっきのローターを、中に入れられたのだ。しか、も。

「うぎゅ゙ッ゙♡♡♡♡!!!?!?」

 振動が。振動が、おかしい。

 自分で使う時は、いつも弱くてかわいい振動にしていた。動いてるか動いてないかくらいの、ソフトなやつ。フルパワーのボタンは、一回も押したことがなかった。気持ちよすぎて怖かったから。

 なのにデンジくんは、無遠慮に最大MAXにしている。そのうえ、そのままデンジくんが、もう一度入ってきた。ローターが入ったまま。ローターを奥に押し込みながら、自分も一緒に。

「や゛あ゛あ゛♡♡♡だめだめだめだめそういうのだめ゛だってば♡♡!!!!」

「さっき自分でしてたじゃん。なんで俺はダメなんだよ」

「だめ゛なの゛♡♡♡!!!!」

 加減ってものを知らないのか!!!

 返事の代わりに奥を小突かれて、ありえないくらいにきたない悲鳴が出た。ぜったいぜったい女の子が出しちゃいけない声が出た。最大パワーのおもちゃが、子宮口の近くで、暴力的に震えている。粘膜に直接叩きつけられる振動で、体の芯ががくがくと揺れる。

 逃げようとした。腰を引こうとした。でもデンジくんの手が腰をがっちり掴んでいて、びくともしない。ぐりぐりぐり。弱いところに、ローターの振動が直接押し当てられて——脳みそが一気にちかちかする。 

 あ、これ、だめな、やつ。

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡♡♡♡♡♡♡♡!!!!!!」

 だらだらと潮を吹いた。吹きだすやつじゃなくて、筋肉が弛緩して止まらなくなるやつ。体が勝手に。振動と圧迫で、ポルチオが限界を超えて刺激されている。

「あー、ぎゅんぎゅんする、これ俺もすげぇ気持ちいい……」

「ごれむぃ゛♡♡♡!!!!!むり゛ッ゛!!!や゛だや゛だや゛だや゛だや゛だ!!!!!!!♡♡♡♡♡♡」

「へーきへーき、気持ちいいのじゃ人間は死なねぇから」

 死ぬ!死ぬッ死ぬ死ぬ死ぬ、こんなの殺される!!!デンジくんの声が遠くから聞こえる。もうほとんど聞こえない。自分の心臓の音と、ローターの振動音と、ぐちゃぐちゃの水音しか聞こえない。


 それで、好き勝手に、腰を振り始めた。私の状態なんて完全に無視して、自分が気持ちいいためだけの、自分勝手なピストンで。ローターが暴れている子宮口に、さらに追い打ちをかけるように先端が叩きつけられる。

「♡♡♡♡♡!!!!!!」

 一突きされるたびに脳みそが弾ける。もう「イく」という概念が消えている。始まりも終わりもない。ずっとイッている。ずっとずっとずっと。ローターが止まらないから、イキ終わることを許してくれない。波が引く前に次の波が来て、さらにその上からデンジくんの重いピストンが来て。

 気持ちいいところから逃げることを、許してくれない。

 泣きそうとかじゃない。とっくに泣いている。ガチガチに泣いている。枕を抱きしめて、顔を押しつけて、声にならない声を上げて泣いている。でもバックだから、デンジくんには見えない。見えないから、気付いてもらえない。

「ぁ、ぁ……♡♡♡♡♡♡」

 意識が飛んだ。枕に顔を埋めたまま、ぶつっと。


 ——ずどん。

 重いピストンで、叩き起こされた。

「ぁっ♡♡♡♡!!」

 戻ってきた瞬間に、また波が来る。ローターがまだ暴れている。子宮口で。ずっと。一秒も休まずに。また潮を吹いた。もう出ないはずなのに。体が無理やり絞り出している。もう何も出ない。出ないのに体がイこうとする。

 意識が飛ぶ。叩き起こされる。飛ぶ。叩き起こされる。その繰り返し。ずっとつらくて、何分経ったか分からない。



「あー、そろそろ出そー、だから……」

 しばらくして、もう涙すら枯れ果てちゃった頃になって。デンジくんの手が中に入って、ローターを引き抜いた。ずるりと抜けていく感覚は分かるけど、もうなにもまともに考えられなくて、でもちょっと楽になったってことだけはなんとなく……なにが、なんだっけ。えっと、えっと、わたし、そもそもなにしてたんだっけ……。

「ぁ……♡♡♡♡」

 子宮口に。デンジくんの先端が、ちゅ♡って。キスするみたいに押し当てられた。

「ひぁ……♡♡♡♡♡♡」

 もう体に抵抗する力が一滴も残っていないから、ほんの少しの刺激で簡単にとろける。デンジくんの体が強張ったのが分かる。中があったかい。

る。

「あ゛ー……きもちー……」

 うう。それ言うのばかっぽくてかわいい。こんなにひどいことをされた後なのに、かわいいって思っちゃうの、なんなんだ。わたし、なんなんだ……。

「も、まんぞく、した……?」

 声が掠れてほとんど音にならない。デンジくんが抜いた後、太腿の間をあったかいものが伝っていく。シーツは潮と汗と涙でぐちゃぐちゃだ。怖かったのと、気持ちよかったのと、好きなのが全部混ざって、余韻がいつまでも体の中をぐるぐる回っている。

「ん。ちょー満足した。ありがと」

 さっきまであんなにめちゃくちゃにしていた手が、今は私の頭をやさしく撫でている。

「……でんじ、くん」

「ん」

「だいすき」

「知ってる。今日だけで百回くらい聞いた」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「かえりたい、もうかえりたい……」

「だめ。後ここ3ページ書き取り」

「賢者タイムにやっても頭入んね~よ、なー副隊長、明日にしよーぜー……」

「やだ」

「……なあ、これちょっと俺にたいする当てつけ入ってんだろ」

「さあ?」


 数時間後、今度はデンジくんの方が補習で地獄を見るのは、また別の話。


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